社員が会社のお金を使い込む、備品を転売するといった横領事件は、様々な企業で発生しています。もし横領が発覚した場合、適切に対応しなければ更に大きなトラブルに発展します。このページでは横領が発覚したときの対応や、証拠となる資料にはどんなものがあるか、NG行為などを分かりやすく解説します。
社員の横領が疑われたとき、まずは「だれが」「どのように」「どのくらい」の3つのポイントを把握できる証拠を集めなければなりません。証拠が不十分なまま解雇してしまうと、横領していないのに不当解雇されたと主張されたり、損害賠償の請求に発展する可能性があります。どのような処罰を決定するにしても、横領の有無を把握するために充分な証拠は必要です。また集めた証拠から横領の事実が立証できるのか、専門家の意見を聞きながら吟味することが大切になります。
どのような記録が、横領の証拠となるのでしょうか。横領した社員が発覚に気づけば、高い確率で証拠の隠滅や隠匿が行われてしまいます。社員同士で口裏を合わせる恐れもあるため、少しでも早く証拠を収集するのが大切です。ここでは横領の証拠となりやすい記録を紹介します。
まず証拠として有力なものは、領収書・伝票・帳簿など紙媒体の資料です。紙媒体の資料に目を通して、不自然なお金の動きがないか確認します。在庫や金額の食い違いだけではなく、一見しただけでは分からないように架空取引を行っているケースもチェックが必要です。すぐに証拠を見つけられなくても、記録は保管するようにしましょう。
パソコン・スマートフォン・USBメモリの中にあるデジタルデータも証拠となります。データの中には社員がやり取りしたメール履歴や、WEBサイトのアクセス履歴、SNSで公開している情報が収集できます。状況によっては裁判の証拠として扱うことも可能です。ただしデジタルデータの場合は証拠を既に削除している可能性が高いため、バックアップを取得したりログを確認したりするために、情報管理の部署と連携の必要があります。もし情報管理に詳しい担当者が社内にいない場合は、専門の業者に調査を依頼するのが良いでしょう。
近年では監視カメラを設置している会社が増えています。監視カメラがある場合は、記録している過去の映像を再生して横領の疑いのある社員の動きを確かめます。たとえば一人でいる時に怪しい動きをしていたり、不必要に金庫を開けているのであれば調査を進めた方が良いでしょう。横領の現場が映っていれば、重要な証拠になる可能性が高いのでデータの保存が必要です。
デジタルデータの証拠収集を行う際、上書きや消去などデータ改ざんが行われている可能性があります。また調査中の誤った操作で貴重な証拠が失われてしまうことも。裁判など法的な対処する場合には、改ざんが行われていた状況を適切な方法で立証しなければなりません。裁判に提出する可能性も考慮して、デジタルデータの証拠を守るためには法的に有効な証拠収集に特化した業者に相談した方が良いでしょう。
何らかの犯罪が疑われる場合、法的に有効な証拠を収集するための調査を「フォレンジック調査」と呼びます。フォレンジック調査の専門業者なら、意図的に消去されたデータの解析・アクセスログの分析、監視カメラの映像データのチェックなどを実施して、横領の証拠を探し出して分析します。裁判で証拠として提出するためのデータ取得は素人では難しいため、専門の機材と人材が揃っているフォレンジック調査の専門業者に依頼するのがベストです。
横領の疑いが把握できたとしても、企業側の対応を間違えてしまうと調査にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。やってはいけないNG行為を紹介するので、横領調査をはじめる前に確認しましょう。
横領の疑いがあると分かれば、横領した社員を問い詰めたくなるかもしれません。しかし問い詰めることで、実際に横領していた場合には証拠を隠滅されてしまう可能性が高くなります。証拠を消したり隠されたりしてしまうと、その後に証拠を揃えるのはかなり難しくなってしまいます。社内での不正調査は慎重に行い、社員には気付かれないよう冷静に進めることが大切です。
証拠が充分にあり、横領の事実が判明している状況であれば問題は少ないでしょう。しかし証拠が揃っていない状態で社員を疑うのはNG行為です。もし横領の証拠をつかんでいない状態で懲戒処分といった処罰を行った場合、社員から不当解雇で訴えられる可能性があります。過去には合意のない解雇によって裁判沙汰となり、企業側が敗訴したケースもあります。
横領した社員に対して、懲戒処分という対応があります。懲戒処分とは懲戒解雇・懲戒減給などの方法があり、企業の就業規則に基づいて処罰される方法です。
横領によって損害を受けた金額や盗まれた物の返還を求めて、民事裁判で損害賠償を請求できます。ただし横領した社員が金品を使い切っており、損害賠償請求をしても賠償できる資産を保有していない場合がほどんどです。そのため和解手続きを進めながら、分割払いなど横領した金品の返済方法を決定することになります。給与天引きが早いと思いがちですが、給与からの天引きは労働基準法に規定があるため原則NGです。本人から了承を得ている場合に限り給与と損害賠償の請求権を相殺できますが、もし社員が天引きを強制されたと訴えれば不利になるため、避けた方が良いでしょう。
横領した社員を業務上横領罪で刑事告訴する方法もあります。刑事告訴なら、損害賠償請求がしやすくなるでしょう。またほかの社員に対しても会社の意思を明確に示し、毅然とした態度を示すことで抑制効果がも期待できます。再発防止という観点から考えれば、刑事告訴も検討した方が良いでしょう。
横領の調査を行い被害状況を把握するためには、証拠収集や分析といった専門的な知識やスキルが求められます。調査する計画を立てて適切な対処ができないと、重要な証拠が失われ、横領の有無も確認できません。またデジタルデータの取り扱いを間違えてしまえば、裁判で証拠として認められない恐れがあります。
そのため横領の証拠であるデータの収集や分析を専門としている「フォレンジック調査」の業者に依頼するのが良いでしょう。横領調査の実績に基づいた対応方法のアドバイスや、刑事告訴を行う場合に証拠として認定されるデータの収集も行ってくれます。
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